まず、燗銅壺(野燗炉)の定義を再復習。
(1)熱燗用の酒器を湯煎で温められる。
(2)湯煎加熱用の炉は上部に開口部を有し、火を直接使った加熱調理(炙る・焼くなど)も出来る。
(3)湯煎槽の中に炉があり、使用中の本体表面温度は100℃を超えない。(屋内卓上利用が可能)
(4)炉の下部には吸気用の焚き口が設けられているのがベターだが必須ではない。
(5)「燗銅壺」だが、材質は「銅」でなくてもよい。
以上を図にするとこんな感じ。

この中で、(4)の吸気について、炭熾し器なりBBQコンロなり、別の手段で炭を十分に熾してから投入するなら、吸気はなくても大丈夫ですが、燗銅壺単体で固形燃料を使ってオガ備長炭に着火する場合は吸気口は必須となります。
吸気口ありのメスティン燗銅壺で、最初に作ったのは王道の側面吸気。この形は王道でエアフローも良好なのですが、メスティン本体に燃焼炉のキッチンポットを固定してしまうので蓋が取り外せなくなり、中のメンテナンスがしづらい課題がありました。あと、メスティン本体に穴を開けて湯煎の水中に吸気管を通すので、水漏れ対策もシビアになります。


そこで思いついたのが「ダコタ式メスティン燗銅壺」です。アメリカ原住民の焚火スタイル「ダコタ・ファイアホール」にヒントを得て、炉の吸気口を90度曲げて天板上に設けるスタイルです。このスタイルのよいところは、吸気口を設けることでエアフローがよくなることに加え、燃焼炉は蓋側に固定されているので、蓋を外せば中をしっかりメンテナンスできる点です。


【ダコタ・ファイアホール】

このスタイルで作った「ダコタ式メスティン燗銅壺」初号機はビギナーズラックでうまくいきましたが、兵式飯盒で2号機を作ってみるとエアフローが上手くいかず、固形燃料は燃えるものの、オガ備長炭は十分に火が熾らず、途中で自消してしまいました。

エアフローが上手くいかなかった原因は、燃焼炉の炉口と吸気口の高低差でした。
このダコタ式飯盒燗銅壺では、兵式飯盒に入れるためメスティンより小さめのポットを使わざるをえず、背の低いポットを湯煎に水没させるため炉口を内蓋と同じ高さまで下げ、逆に吸気口はツギタシソケットで内蓋に固定したため、炉口より吸気口が15o高くなっていました。

Youtubeのコメントでその点に関してヒントをいただき、あえて炉口の高さを上げて、吸気口を炉口より下げる工夫をしてみたところ、炉口と吸気口の高低差を大きくするほどエアフローがよくなり、炭がよく熾るようになりました。

まあ、よくよく考えてみたら当たり前で、このまま吸気口を下げて水没させたのが従来からの燗銅壺の形ですもんね。ということは、吸気口の口径が同じ場合、どう頑張ってもダコタ式は従来式(側面吸気)に敵わないことになります。であれば、そもそもの吸気口の口径を大きくしてやればいいという考えに至りまして、製作したのが「ダコタ式メスティン燗銅壺・改良型」です。
従来は呼び寸13Aという内径約12oの水道管を使っていましたが、改良型では呼び寸20Aという内径約22oの水道管を使うことにしました。

20Aの水道管はホムセンでも取り扱いが少なく割高になってしまいますが、効果はテキメンでした。13Aで製作した初期型と20Aで製作した改良型では、明らかにエアフローは良くなり、煙の吸い込み具合は13Aの側面吸気に迫る勢いになりました。
しかし、初期型と改良型の比較燃焼実験で、新たなこともわかりました。
燃焼炉の炉径の問題です。初期型では直径9cmのポットを使っていましたが、改良型では炉の高さを稼ぐため、直径10cmのポットを使いました。そうすると、火の熾りは改良型に軍配が上がりましたが、湯煎温度の上がり方では初期型に軍配が上がりました。この燃焼実験ではオガ備長炭を1本で比較したため、口径が大きく炭と壁面の距離が遠い改良型の方が不利になった可能性があります。

以上のことから、ダコタ式でも吸気口の口径を大きくするとエアフローを向上させることが可能であるのは間違いなさそうですが、炉径はむしろ小さめの方が少ない炭でも効率よく湯煎を温められそうであることがわかりました。
なかなか、奥が深いですね。